星のかけら ブログ

岐阜県東濃地方を中心に鳥や虫などを観察しています。私たちのまわりには不思議がいっぱい散らばっています。虫嫌いな人はごめんなさい。たまに可愛い芋虫も出てきます。

カナムグラの花に集まるミツバチ

私の週末ごとの観察路には、ツル性植物であるカナムグラがたくさん生えています。以前にも紹介しましたが、カナムグラの実は鳥たちの大好物なので、野鳥観察の必須アイテムです。

 

今、そのカナムグラに花が咲いていて、セイヨウミツバチが集まっていました。その時は、こんな地味な花でもおししい蜜を出すんだなと思っていました。どんな味のする蜂蜜が取れるんだろうとも。

ところが、昨日、不思議なことに気が付きました。カナムグラには、雄花と雌花がありました。写真の赤い矢印が雄花、黄色い矢印が雌花です。さらに、茎をたどっていくと、雄花の付いている茎には雄花だけが、雌花の付いている茎には雌花しか付いていません。雌雄異株ということになります。

雄花のアップです。大きな葯が垂れ下がっています。

こちらが雌花です。ビールの原料となるホップの形をしていて、ここに鳥たちの大好物となる実ができます。

雌雄異株ということは、カナムグラの花は、虫が花粉を運ぶ虫媒花ではなく、風が花粉を運ぶ風媒花ということになります。そして、虫を呼ぶ蜜を出す必要はなく、花に蜜はないということになります。
どうして蜜のない花にミツバチが集まっていたのでしょう。調べて見ると、どうやら雄花の花粉を集めているようです。ミツバチにとって、蜜は主食、花粉はおかずのようなものらしくて、花粉も大事な食料なのです。だから、花の少ないこの時期、たくさんの花粉を作るカナムグラに集まっていたのでしょう。

まだまだ知らないことが多いです。日々観察ですね。

 

渡来昆虫たち〜ラミーカミキリ、ブタクサハムシ、モンクチビルテントウ、アワダチソウグンバイ、ポチャジア・シャントゥンゲンシス

昆虫の世界でも、外来種が、身近に普通に生息していることに気が付きました。そこで最近見た外来種の昆虫を集めてみました。

 

最初はラミーカミキリ。瑠璃色をしていたので、ルリボシカミキリかと思ったのですが、少し模様が違います。でもお洒落な模様ですよ。明治初期に、ラミー(カラムシの仲間)という繊維をとる植物と一緒に大陸から渡ってきたようです。私が見たところには、近くにムクゲの木があり、そこに来ていたようです。幼虫が植栽されたムクゲの茎を食べてしまうので、嫌われることもあるそうです。

 

次からは、最近見つかった渡来昆虫たちです。まずはブタクサハムシ。外来植物のブタクサやオオブタクサを食べる甲虫です。日本では1996年に発見されてから、一気に分布を広げ、今では全国で見られるそうです。ブタクサ、オオブタクサは花粉症の原因植物ですので、それを食べてくれるブタクサハムシは、花粉症の抑制に役立っていることになります。実は、原産地の北米では、ブタクサは食べるけど、オオブタクサは食べないそうです。それが日本にやって来て、オオブタクサを食べるようになったとのこと。下の写真でもオオブタクサの葉を食べています。これも一種の進化といえるのでしょう。

参考:東京農工大学のプレスリリース

https://www.tuat.ac.jp/documents/tuat/outline/disclosure/pressrelease/2015/201601261308081698647559.pdf

 

続いてはモンクチビルテントウ。よく見るテントウムシと違って、細かい毛が沢山生えています。調べてみたら、原産地は台湾など南のほうで「1998年に沖縄に侵入が確認」と書かれていました。こちらはつい最近のことです。もうここ(岐阜県)まで北上してきたということですね。

 

次は、ムネアカハラビロカマキリ。在来のハラビロカマキリにそっくりですが、胸が赤いのが特徴です。原産は中国大陸で、2010年頃初確認されてから、急速に分布を広げています。こちらは侵入経路がほぼ分かっていて、中国から輸入された竹箒に卵の鞘が偶然付いていて、それを公園などの清掃に使ったため、全国に広がったようです。

 

ここから少し変わった昆虫を紹介します。まずカメムシの仲間のアワダチソウグンバイ。面白い形をしていますね。原産は北米で、1999年に兵庫県で初確認され、急速に分布を広げているそうです。外来種だけあって、外来植物のセイタカアワダチソウやオオブタクサなどの汁を吸います。

 

最後は、なんとまだ和名がありません。学名がPochazia shantungensis(ポチャジア・シャントゥンゲンシス)というカメムシの仲間です。2018年ごろから日本で確認されるようになったみたいで、ごく最近です。ですが、私の家の近くにもやってくるので、かなり分布を拡大しているのでしょう。どうやって渡って来たのでしょうか。

実は、在来種のアミガサハゴロモ(下の写真)とそっくりで、2年前から見ていたのですが、最近まで気が付いていませんでした。在来のほうが、色が薄くて少し緑がかっています。目の色も外来種は赤いです。

 

こうやって見ると、明治期に渡来した昆虫もいる一方で、ごく最近に渡来した昆虫も多いことが分かりました。渡来した経路もおそらく様々でしょう。これからも見たことのない外来種が増えていくのでしょうね。


 

 

芋虫の好き嫌い〜タイワンキシタアツバ、フクラスズメ

週末の自然観察散歩で、道端の側溝に沢山のイラクサが生えているのを見かけました。何気なく見ていると、ある違和感を感じました。下の写真ですが、左のイラクサの葉と右のイラクサの葉が微妙に違います。左の方が緑色が濃い気がします。触ってみると、左の方が固い感じがしました。帰って調べてみたのですが、イラクサにも色々種類があって、2種類が一緒に生えていることが分かりました。左がアオミズ(青水)、右がヤブマオ(藪苧麻)でした。

ところで、上の写真で他に違いがあるのに気が付きませんか?そう、右のヤブマオには虫食いの穴があるのに、左のアオミズには虫食いの跡がないのです。そこで、誰がヤブマオを食べているのか観察してみました。

最初に見つけたのは、タイワンキシタアツバの幼虫です。黒い斑点が体だけでなく頭にもあるのが特徴です。意外に可愛い顔をしていますよ。

フクラスズメの幼虫もいました。派手な色をしていますが、毒は持っていません。ちょっかいを出すと、頭をものすごい勢いで振り回します。これがなかなかの光景です。

2種類の芋虫とも、同じように生えているイラクサの仲間のうち、ヤブマオだけを食べていました。つまり、好き嫌いがあることになります。これって大発見!?(ということにしておこう)どちらも食べきれないほどたくさん生えているので、味が良い方に集まるのでしょうね。

寄生蜂に寄生する蜂?〜キスジセアカカギバラバチ

腹に黄色い筋があって、胸が赤い意外とカラフルなハチに出会いました。これなら図鑑で見つけられるだろうと思って調べると、キスジセアカカギバラバチだと分かりました。黄色い筋があるから「キスジ」、背中が赤いから「セアカ」、そして「カギバラ」は、腹部の先端がカギ状に曲がっているから。覚えやすい名前ですね。それから図鑑には、「チョウやガなどの幼虫に寄生している寄生バエ、寄生蜂に二重寄生する」(川邊透;昆虫探検図鑑1600)と書いてありました。寄生蜂に二重寄生する蜂?意味が良く分かりません。

そこで、大阪市立自然史博物館の「ハチまるごと!図鑑」で調べてみました。ありました!まず、植物の葉の縁に卵を産みます。(下の写真はその産卵風景かもしれません)これをチョウやガの幼虫が食べます。消化液が刺激となって孵化がおこります。チョウやガの幼虫が「他の寄生バチや寄生バエに寄生される」と、それらの幼虫を食べて成長します。えっ?それってとても確率の低い話じゃないですか!そのままチョウやガの幼虫を食べて育てば良いと思いますが。というわけで、カギバラバチの仲間は、とても沢山の卵をそこら中に産み付けるそうです。数打ちゃ当たる方式ですね。

昆虫をよく調べると、常識では計り知れない生態を持っていることに気づきます。太古から生き延びているのですから、それで理にかなっているのでしょう。常識なんて当てになりませんね。

 

 

ウラギンシジミの幼虫の不思議な行動

ウラギンシジミという、シックな装いの蝶がいます。今日、その幼虫を見つけたので紹介します。ちょっと変わった行動をします。

ウラギンシジミは、名前の通り翅の裏側が銀色(白に近い)をしています。

翅を閉じて止まるので、表側の写真はほとんど撮れません。たまたま撮った写真がこれです。青い斑があるのでメス。オスは赤斑です。

さて、今日見つけたまだ若い幼虫です。クズの花に隠れていました。色もクズの花の色に合わせてピンク色をしています。小さかったので、自分でもよく見つけられたなと思います。

そして少し大きくなった幼虫も見つけました。とても綺麗なピンク色をしています。顔は、下側にちょっとだけ出ています(小さな黒い目が見えています)。そして、お尻側に穴の開いた大きな突起が2本出ています。これは何でしょう?

実は予習していたので、枯れ枝でつついてみました。その時の様子が下の動画です。なんと突起からブラシ状の線香花火のようなものが一瞬出てきました。これは図鑑に「徘徊性のクモなどに対しては致命的でない部分を嚙ませる『誘き寄せ効果』を、サシガメのような外敵には『おどし効果』を持つ」と書いてありました。すごい行動をしますね。そう言えば、アゲハチョウの幼虫も頭の方から臭い突起を出して天敵を脅しますが、ウラギンシジミの幼虫の突起は臭くないそうです。

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【2023.9.10追記】

昨日もう一度ウラギンシジミの幼虫に会いに行ってきました。少し大きくなって、背中に白い筋が現れていました。これが終齢幼虫なのかな。

動画から、線香花火のような突起物が出た瞬間を抽出しました。こんな形のものを体から出すなんて、不思議すぎます。

その時の動画です。

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大人の自由研究〜セミの抜け殻集め

夏休みも終わり、子供たちの自由研究の作品展が始まりました。私が住んでいるの市の作品展のリストを見てみると、小学生2年生の「ナミアゲハのサナギの色のふしぎ~どんなりゆうでサナギの色がちがうのかしらべてみた」というのがあったり、すごいところに目を付けるなと思いました。

私も自由研究の定番と思われるセミの抜け殻集めをしてみました。やって気が付いたのは、発生時期が違うので、夏の初めからちゃんと集めておかないと、種類が限定されます。夏休みの終わり頃におもむろに始めると、ミンミンゼミとツクツクボウシしか集まらないことになってしまいます。

下の写真は、大きさ順に並べたセミの抜け殻です。大きなグループ(アブラゼミとミンミンゼミ)と小さなグループ(ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ)に分かれますね。小さなグループは色と形で区別ができるのですが、アブラゼミとミンミンゼミの違いは、色や形では分かりませんでした。大きさもほとんど一緒です。

調べたところによると、顔と触角を見ると分かるそうです。
まず下の写真の上側がミンミンゼミ、下側がアブラゼミです。

違いが分かりましたでしょうか?まず、顔の先の鼻のようなところですが、アブラゼミにはヒゲのような黒い部分がありますが、ミンミンゼミにはありません。次に触角を見ます。明らかにアブラゼミの方が毛が多いです。そして触角の節を付け根から数えていき、3番目の節の長さを2番目と比べます。あまり変わらないのがミンミンゼミで、3番目が長いのがアブラゼミです。なかなか微妙な違いです。

すべてネットで調べた情報ですが、やはり一目瞭然とはいかないようです。慣れると分かるのかもしれませんが。

晩夏に現れる南方系の昆虫〜ウラナミシジミ、ウスバキトンボ

ここ岐阜県で、この時期にだけ見られる昆虫がいます。それは、毎年南からやって来るのですが、寒さで越冬できない昆虫たちです。どうしてそんな無謀なことをするのかは分かりませんが、将来地球が温暖化することを見越して、生息域を増やすためかもしれません。

最初はウラナミシジミです。今年は8月26日に初めて見ました。大型のシジミチョウで、飛翔力も強いそうです。温暖な地域(千葉県南端部、伊豆半島南部、紀伊半島南部、四国・九州の温暖地およびそれ以南)で越冬し、春になったら世代を繰り返しながら北へ移動します。そして、南に戻ることなくそこで一生を終えるのです。おそらく岐阜県より北へも飛んでいっていると思います。翅の模様が明るくて、なんとなく南方系な感じがします。

次はウスバキトンボです。こちらは8月21日から集団で飛び始めました。このトンボが越冬できるのは、八重山諸島より南の東南アジアや中国大陸です。こちらも世代を繰り返して北上します。海も渡るそうです。そして全国に飛来しますが、こちらも寒さに弱く、やはり越冬できずに死に絶えてしまうのです。

ウスバキトンボは普段、上の写真のように集団で上空を飛んでいて、ほとんど着地することはありません(夜はどこかで休憩していると思うのですが)。たまたま着地してくれたウスバキトンボが下の写真です。金色に近い黄色をしています。飛んでいても色をよく見れば、赤とんぼと間違うことはありません。

どうして大変な労力を使って毎年北上を繰り返さないといけないのか不思議に思いますが、昆虫たちにとってはきっと合理的な理由があるのでしょう。4億年も生き抜いてきたのですから。

 

参考:白水隆;日本産蝶類標準図鑑(学研)、尾園暁他;日本のトンボ(文一総合出版)

神秘的な寄生バチ〜キイロトガリヒメバチ

動物の中で最も種の数が多いのが昆虫です。昆虫の中では、甲虫(世界で37万種)、チョウ・ガ(13万7千種)、ハチ(13万種)の順に種数が多いとされています。ですがハチは、似たものが多くて、まだ分類が進んでいません。もしちゃんと分類できたら、ハチは動物の中で種数が多いトップ1、2を争うと言われています。

さらに種数の話を進めると、ハチの種数の半分を占めるのが、一般に寄生バチと呼ばれるヤドリバチ類です。ハチというと、ミツバチ、スズメバチなどが有名で、寄生バチって言われても知りませんよね。私も昆虫の観察をするようになる2年前までは、その存在に全く気付いていませんでした。

寄生バチの種数は、日本で2000種以上です。安価な図鑑もないし、ネットで調べても、名前が分かることはほぼありません。ところが、昨日見かけた寄生バチは、名前が分かりました。体の色が橙色だったからです。触角の先が白いのも特徴的です。キイロトガリヒメバチといいます。橙色なのですが、名前は黄色になっていますね。

このキイロトガリヒメバチ、とても不思議な習性を持っていました。良かったら動画を見て下さい。触角を小刻みに震わせて、さらに回転させるのです。一体何をしているのでしょう?ネットで調べてもよく分からないので想像ですが、卵を産み付ける宿主(多分、芋虫)が葉の裏にいないか、振動を使って探しているのではないでしょうか。寄生バチは、芋虫に細い産卵管を刺して卵を産み付け、孵化した幼虫がその芋虫の体液を吸って成長します。見つけた寄生バチは細い産卵管を持っているので、メスです。だから、芋虫を探しているのだと思いました。もし振動で芋虫を探しているのであれば、ものすごく巧妙です。人間が金属やコンクリートの割れを調べるために行う非破壊検査と同じです。

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(参考)大阪市立 自然史博物館、第43回特別展解説書「ハチまるごと!図鑑」(2012)